現場で長年フローリングを貼ってきた職人の立場から言わせてもらうと、平米単価という数字はあくまで目安に過ぎず、現場の状況によって「本当のコスト」は大きく変わります。多くの施主様が、材料のカタログ価格を見て予算を立てられますが、現場では必ず材料のロスが発生します。部屋は完璧な長方形であることは稀で、壁際でのカットや柱の逃げ、ドア枠の加工などで、実際の面積よりも一割から二割ほど多くの材料を発注しなければなりません。つまり、見積もり上の平米単価が五千円であっても、実質的な材料費はもっと高くなっているのです。また、施工費の平米単価についても裏があります。複雑な間取りや、細かい凹凸が多い部屋、あるいは六畳以下の狭い空間を複数張り替えるような現場は、職人の手間が倍以上かかります。そのため、平米単価で算出すると赤字になってしまうため、小規模工事では単価設定を上げるか、一律の基本料金を設けるのが業界の常識です。さらに、下地の状態も平米単価を跳ね上げる要因になります。古い床を剥がしてみたら、下の合板が腐っていたり、コンクリートが凸凹だったりすることは珍しくありません。この下地調整を怠ると、どんなに高い平米単価の高級フローリングを貼っても、すぐに音鳴りがしたり隙間が開いたりします。プロの職人は下地を見て、そこにどれだけの平米単価をかけるべきかを判断します。施主様にお願いしたいのは、単価の安さだけで業者を競わせないでほしいということです。極端に低い平米単価で請け負う業者は、接着剤をケチったり、見えない部分の調整を省いたりして時間を短縮せざるを得ません。結果として数年で床が浮いてくるようなことになれば、再工事の平米単価は最初の数倍に膨れ上がります。適正な価格には、それを裏付ける丁寧な下準備と熟練の技術が含まれています。見積書の平米単価が高いと感じたら、なぜその金額になるのか、どのような工程に時間をかけるのかを職人や担当者に直接聞いてみてください。納得のいく説明ができる業者こそが、長期にわたって安心できる床を仕上げてくれるはずです。