建築のプロフェッショナルとして数多くのバリアフリー改修に携わってきた経験から言えることは、手すりリフォームの成功は正しい位置と高さの選定にかかっているということです。どれほど高価で頑丈な手すりを取り付けても、それが使う人の身体特性に合っていなければ、かえって動作を妨げたり事故を誘発したりする原因になりかねません。手すりの高さの基本は、一般的に床から七十五センチメートルから八十五センチメートル程度とされていますが、これはあくまで目安に過ぎません。本来は、使う人が直立して腕を自然に下ろした時の手首の関節の高さに合わせるのが、最も力が入りやすく疲れにくいとされています。また、使用する目的によっても最適な位置は異なります。例えば、廊下などの水平移動を助ける手すりは、一定の高さで連続していることが望ましく、途中で途切れないように連結ブラケットを使用することが重要です。一方、トイレや浴室などの立ち座り動作を伴う場所では、縦方向の手すりと横方向の手すりを組み合わせたL字型が非常に有効です。縦の手すりは立ち上がる際の引き寄せる力を支え、横の手すりは座っている時の姿勢の安定や、立ち上がった後の保持に役立ちます。階段の場合は、段鼻と呼ばれる踏み板の先端を結んだ線から一定の高さに平行に設置するのが鉄則ですが、昇りきった場所や降りきった場所で手すりを二十センチメートルほど延長して水平部分を作っておくと、最後の一歩まで安全に体重を預けることができます。さらに、手すりの太さについても、高齢者や握力が弱い人の場合は、直径三十ミリメートルから三十五ミリメートル程度の少し細めのものが握り込みやすく、指がしっかりかかります。リフォームに際しては、壁の強度不足を補うためにベース材を併用することが多いですが、これを単なる補強板と捉えず、壁面とのコントラストをつけて手すりの位置を視覚的に強調する工夫を施すことで、弱視の方にとっても使いやすいユニバーサルデザインが実現します。プロの知識を最大限に活用し、住む人一人ひとりの身体に馴染むオーダーメイドのような設置を行うことこそが、真の意味でのバリアフリー改修なのです。