住宅の再生に携わる建築家として、私が間取り変更リフォームにおいて最も大切にしているのは、目に見える壁の配置よりも、目に見えない空気の流れと視線の抜けをどのようにデザインするかという視点です。多くの施主様は、部屋をいくつにするか、あるいはキッチンの向きをどうするかといった具体的なパーツに意識が向きがちですが、真に心地よい空間を作るためには、家全体を一つの有機的なシステムとして捉える必要があります。例えば、壁を取り払って一部屋を大きくする際、単に面積を広げるだけでは、空間が間延びして落ち着かなくなってしまうことがあります。そこで私は、天井の高さに変化をつけたり、床の素材を切り替えたりすることで、物理的な壁を作らずとも心理的な境界線を設ける工夫を提案します。これにより、家族が同じ空間にいながらにして、それぞれの活動に集中できる絶妙な距離感が生まれます。また、光の取り込み方についても、間取り変更は絶好の機会です。北側の暗い部屋に南側の窓からの光を届けるために、欄間を設けたり、透過性のある建具を採用したり、あるいは室内窓を設置することで、昼間は照明に頼らない健康的な暮らしが可能になります。光が奥まで届くことで、視覚的な広がりも強調されます。さらに、風の通り道を計算することも忘れてはなりません。対角線上に空気の抜け道を作ることで、夏場でも自然の風が通り抜け、湿気や熱気がこもらない清潔な住環境が整います。間取り変更は、建物のポテンシャルを最大限に引き出すための外科手術のようなものです。構造という制約を深く理解した上で、そこに住む人の感性や日々の何気ない動作に寄り添った設計を施すこと。表面的な新しさだけでなく、十年経ってもこの家にしてよかったと思えるような、普遍的な快適さを追求することこそが、プロとしての使命だと考えています。空間の質を変えるのは、高価な素材だけではありません。光、風、そして家族同士の適切な距離感。これらを調和させることで、古い建物は魔法をかけられたように生き生きとした輝きを取り戻すのです。
建築家が語る間取り変更で最も大切にすべき視点と空間の工夫