家は、そこに住む家族の歴史を刻む舞台です。新婚時代、子育て期、そして子供が独立した後のセカンドライフと、時間の経過と共に家族の形は変化し、それに伴って住まいに求められる機能も変わっていきます。こうしたライフステージの変化に、その都度大規模なリフォームで対応するのは大変なことです。しかし、「可動式間仕切り」を上手に取り入れることで、一つの空間が様々な役割を担い、しなやかに家族の変化に寄り添う住まいを実現することができます。例えば、新婚や夫婦二人の暮らし始めは、広々とした開放的なリビングダイニングが理想的かもしれません。しかし、やがて子供が生まれると、そのリビングの一角に安全に遊べるキッズスペースが必要になります。そんな時、可動式間仕切りがあれば、普段は開け放ってリビングと一体で使いながら、来客時や赤ちゃんがお昼寝する時にはさっと仕切って、落ち着いた空間を作ることができます。子供が成長し、自分の部屋を欲しがるようになると、可動式間仕切りはさらにその真価を発揮します。初めは一つの大きな子供部屋を用意し、中央に間仕切りを設置しておきます。幼い頃は全開にして兄弟姉妹が共に過ごす広いプレイルームとして、そして思春期を迎え、プライバシーが必要になれば閉め切って二つの独立した個室として機能させます。壁で完全に分けてしまうのとは異なり、将来子供たちが巣立った後には、再び間仕切りを開けて一つの大きな部屋に戻せるという大きなメリットがあります。子供が独立した後の夫婦二人の暮らしでは、その空間は全く新しい役割を担います。例えば、夫の書斎と妻のアトリエとして使い分けたり、一つの大きな趣味の部屋として活用したりすることも可能です。また、将来的に親との同居を考える場合にも、この柔軟な空間は役立ちます。リビングの一部を間仕切りで区切り、親のプライベートな寝室として提供することもできるのです。このように、可動式間仕切りは、未来の予測しきれない変化に対する「備え」となります。家の形を家族の形に合わせるのではなく、家の形が家族の形に寄り添ってくれる。そんな柔軟な発想が、これからの時代の住まいづくりには求められているのかもしれません。